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紫陽花の残夢で逢いましょう 歌:武蔵坊弁慶(宮田幸季) 花びらのよう 色づいた萼(がく) 紫陽花はそう 偽りの花 微笑みに今 沈めた想い さらしましょうか 独り芝居に 触れてはいけない 可愛い天女の君 守りましょう その優しさを すべて君に返すため 終止符を あの月輪(つき)に映る 紫陽花の残夢(ゆめ) 届かない 幻想(まばろし)よ 帰りなさい 幸せに 僕は傷と呼べぬ この痛み抱きしましょう 罪の後先 出会いと別離れ 移ろう時は 回り灯篭 静寂にほら 君の残り香 たどりましょうに 独り遊びに 染めてはいけない 真っ白な天女の素肌(はだ) 奪いましょう その苦しみは すべて君の翳りには 終止符を この胸に描く 紫陽花の残夢(ゆめ) 微熱(ぬくも)りの 重ね絵よ 帰りなさい あの場所に 僕は罪と咎を この胸に抱きましょう まぶしすぎる… 君という光 消え残る残夢(ゆめ) 色褪せぬ 哀しみよ 僕のものに ならないで 帰りなさい 遠き幸せに そして 残夢(ゆめ)で逢いましょう …泣かないで…
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また逢いましょう(後編) ◆KKid85tGwY ミハエルが男に蹴り飛ばされた。 そう認識出来たのは、ミハエルが空中を舞い落ちたのを確認してからだった。 赤い髪を後ろにたなびかせた奇妙な白い外套の男は、金属の様な物で覆われた蹴り足を降ろしながら呟く。 「ああ……2分20秒……また2秒、世界を縮めた……」 そして余りの急展開に、呆気に取られるかがみに向き直る。 「お嬢さん、無事ですか? 大丈夫ですか? 何処かお怪我は有りませんか!?」 男は尻餅を付くかがみに、手を差し伸べる。 かがみはすぐにそれを受け取れない。 「おぉぉぉーっと、申し遅れました。俺は決して怪しい者ではありません。世界最速のアルター使い、ストレイト・クーガーと申します!! 俺以外の参加者を捜して市街に向かっていた所を通りすがりに偶然貴女をお見掛けして、その可憐な姿に見惚れてこうしてお声がけした訳です。 こうして出会ったのも何かの縁。何かの運命。俺は常々こう思うんですよ。人との縁、人との出会いを大事にしたいと。古人も言っています。 一期一会、袖振り合うも多少の縁。そう考えると俺の世界を縮めるアルター能力『ラディカル・グッドスピード』は実に出会いのチャンスを与えてくれます。 この能力で世界を誰よりも速く東西奔走すれば、必然様々な出会いにも恵まれると言うもの! そして今日もこんな素敵な女性と巡り合えた! どうですかぁ、貴女もこの出会いを祝して、俺と一緒に市街までナイスなドライブと行きませんか!?」 おぉぉぉーっと、から行きませんか!? までその間実に30秒!!! これが21歳の青年ストレイト・クーガー、ベストコンディションの姿である。 しばし固まっていたかがみも、クーガーが自分を助けてくれた事実を思い出し 恐々ながら差し出す手を取り立ち上がった。 「……た、助けてくれてありがとう」 「なあに、危機に有る女性を助けるのは、連経済特別区域通称ロストグラウンド治安維持武装警察組織『Hold』内の 対アルター能力者用特殊部隊『Holy』に所属する者、いやいや違う。それは違うぞ! それ以前に1人の男として当然の事です!」 「当然では無い。それ以前に貴方は彼女を助ける所か、助かる邪魔をしてしまったんだ」 優に10mは蹴り飛ばされたミハエルだったが、特にダメージのある様子は見られない。 「…………クーガーさん、ですか? 貴方は……どうやら、私の夢をお話しするだけ無駄の様だ」 「愚問だなァ。俺の進む道は俺が決める! 他人に運命を左右されるとは意志を譲ったという事だ、 意志無きものは文化無し。文化無くして俺は無し。俺無くして俺じゃ無いのは当たり前!!」 「有無を言わさず人を蹴るなんて……貴方には常識とか良識とか、そう言うものが無いのか!?」 「お前が言うな!!」 「全くだ。こっちはデート中だってのに邪魔しやがって」 「誰がデート中だ!?」 「そこで、ツッコまないで…!」 「そこを指摘しないでどうするんだ。彼女は貴方とデート中では無く、私と同じ夢を見ていたんだ」 「違うわ!!」 「ハッハッハッハッハ!! 未練がましいなァ、しつこい男は嫌われるぜ?」 ミハエルは呆れたと言わんばかりに首を横に振って、腰に有った剣を取り出し ベルトのバックルから抜いたカードを装填した。 ――SWORD VENT―― 天からミハエルに大剣、と言うより突撃槍(ランス)と言うべき巨大な武器が降りて来た。 「大丈夫。クーガーさん、貴方を相手にするとなると多少は手荒い真似も必要みたいだけど。 貴方もこれからは、私の胸の中でちゃんと生き続けるのだから……」 「言っただろう、俺の進む道は俺が決める。男の胸の中で生きるなんざ、絶対にノウ!!」 ミハエルの踏み込みは一瞬でクーガーとの間合いを無にし、即座にランスを振り下ろす。 ランスは地面を文字通りに切り裂く程の威力を示した事から、重量も相応の物だと見受けられる。 それだけの質量を振るいながら、ミハエルの動きは人の物とは思えない程に速い。 しかしそれ以上に驚くのは、攻撃を受けた筈のクーガーが消えた事である。 「遅いなァ」 クーガーの声が、ミハエルの真横から聞こえる。 ランスを横に払うも、もうそこにはクーガーの姿は無い。 「遅いと言っている! スロウリィだと言っている ! !」 今度は斜め前からの声。 斬り付けるも、やはり手応えは無い。 (…………何これ? 目で追う事も出来ないんだけど…………) ミハエルは神速とも言うべき動きで、クーガーに襲い掛かる。 それをより以上の速度で、クーガーが回避し続けていた。 かがみはこの時になって初めて、この場が単なる殺し合いの舞台と言うだけでなく 自身の想像を絶する存在が跋扈する世界だと認識し得た。 ――TRICK VENT―― 突如、ミハエルの姿が2つに別れた。 2人のミハエルに挟まれ、流石のクーガーも意表を衝かれた様子で動きが止まる。 「残像? 俺より速く動いて見せた!? 馬鹿な! 有り得ない!! インポッシブル!! 俺より速く動ける者等この世に存在しない!!!」 その背後から3人目のミハエルがランスによる突き。 クーガーは身を捻って、それを避わす。 そこからランスが横薙ぎに振るわれ、クーガーの身体は吹き飛ばされた。 5mは地面と平行に飛んだ後、地面を転がる。 ミハエルの、決して太いとは言えない腕からは考えられない膂力。 更に、計6人にも姿を増やしたミハエルがクーガーを囲む。 「こうなっては、クーガーさん……貴方に勝ち目は無い。もう、無駄な抵抗は止めにして欲しい」 「大した自信だ。速さに頼らず分身するとは驚いたが、たった6人程度じゃあ俺を止めるのには、足りない!」 敵に囲まれながら、起き上がるクーガーは不敵に笑みを浮かべている。 そして陸上競技の予備動作の如く、身を低く構えた。 「全然足りない! 足ァりないぞォ! お前に足りない物は、それは―――――――――」 刹那、砂塵を上げクーガーの姿が消えた。 「情熱―――――――――――――――――――――――――――――――――――――」 ただ速く、ミハエルの1人が蹴られ掻き消える。 「――思想―――――――――――――――――――――――――――――――――――」 何よりも速く、2人目のミハエルが蹴られ掻き消える。 「――――理念頭脳―――――――――――――――――――――――――――――――」 更に速さを増し、3人目のミハエルを消し去る。 「――――――――気品優雅さ勤勉さ!!―――――――――――――――――――――」 更なる加速、4人目と5人目のミハエルも消し去る。 「――――――――――――――――――そしてェ何よりもォォォ、速さが足りない!!」 止まる事を知らない加速の果て、6人目のミハエルが蹴り倒された。 「纏めて蹴り倒してやろうと思ったら、他は全部幻影だったとはなァ。速さの無い力は所詮虚仮。 速さはあらゆる能力に優れて勝る、唯一無二絶対無敵最強最大の戦力なのだァ!!」 ミハエルはランスを杖に、何とか立ち上がる。 「くっ、動きさえ止められれば…………これは!?」 全身を被う装甲が、粒子となって宙に溶けて行く。 「時間切れ……………………これ以上の戦闘続行は不可能か。…………仕方ない。 憶えて置いて欲しい。私は決して夢を諦めはしない。……だから…………何れ、また逢いましょう」 ――NASTY VENT―― 蝙蝠の怪物が羽ばたきを始め、突風の如き衝撃波が発せられる。 激流と化した衝撃波は、一直線にかがみへ向かって行く。 それを受けたかがみは、堪らず吹き飛ばされる。 ――――筈だった。 気付いた時には、クーガーの両腕に抱えられていた。 かがみの居た地点はすでに遥か遠方で、衝撃波に拠り砂塵を舞っている。 自分が気付かぬうちに抱きかかえられていた事に――今日でもう何度目にもなるが――驚嘆し、かがみはクーガーの顔を見上げる。 当のクーガーは険しい顔でミハエルの居た、公園の方を見つめていた。 ミハエルの姿が見えない。 それでかがみにも衝撃波による攻撃が、クーガーを自分に引き付け その隙にミハエルが逃げる為の物だと理解出来た。 「…………逃げられたんだ……」 「なぁに、俺の速さを持ってすれば何時でも何年何ヶ月何日何時間何分何秒のタイムロスを開けられようとすぐさまに追い付いてみせます」 「そう……そ、それよりも私はもう降りても、だ、大丈夫だから!!」 かがみは自分がクーガーの腕の中に、俗にお姫様抱っこと言われる状態で居た事を思い出し 恥ずかしさにしどろもどろになりながら、慌ててクーガーの腕から降りる。 「ハッハッハッハッハッハ!! 俺はさっきのままでも、構わないんですがねぇ。 先程も言いましたが、俺は市街へ向かおうと考えていたんですよ。何故市街を目的地とするのか!? その理由は単純至極簡単明快。 市街こそ近代施設娯楽空間学術資料等の集まる、言わば文化の集積地! ロストグラウンドでも荒野より市街が文化的!! 文化的ならそこに人が集まるのは当たり前! そう判断した為ですよ!! ……これもさっき言ったか? まあいいや。さっき言ったついでにもう1度お誘いしましょう。貴女も市街までご一緒しませんかァ!? 勿論世界最速たる俺の速さに付いて来るなんて真似は、貴女には到底適わないでしょう。 しかぁし心配御無用万事私にお任せ下さい。オォォルザァッツオォォォォォケイ!! 私が貴女を抱えて走ればノープロブレム。後は私が、地球上の如何なる移動手段よりも安全快適何より最速で市街までエスコートします!! どうですかぁ? きっと素敵なドライブになると思いますよぉ?」 かがみが引き気味になっているのを気にも留めず、クーガーは捲し立てる。 かがみとしては、クーガーは命の恩人。決して信用出来ない人ではないだろう。 先程は信用出来ると判断したミハエルに裏切られたのが、未だに胸中のしこりとして残ってはいるが クーガーの限っては、今度こそ滅多無いと思えた。 しかしどうしてもかがみは、クーガーの誘いに二の足を踏んでしまう。 クーガーは間違い無く、悪い人間ではない。 しかしかがみがクーガーを1言で言い表すなら、それは変態と呼ぶだろう。 (…………私って、変わり者によっぽど縁があるのか?) かがみは今は遠いアホ毛の友人を思い浮かべながら、手を差し伸べるクーガーに冷たい目を送り続けていた 【一日目深夜/F-5 岸辺】 【柊かがみ@らき☆すた】 [装備]:エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に、北条悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に [所持品]:支給品一式 [状態]:健康、全身が軽く濡れている [思考・行動] 1.つかさ達を捜す。 2.クーガーの誘いに乗る? 【一日目深夜/F-5 岸辺】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [装備]:なし [所持品]:支給品一式、ランダム支給品(1〜3)未確認 [状態]:健康、ラディカル・グッドスピード(脚部限定)発動中 [思考・行動] 1.かがみと共に市街へ行く。 既に『仮面ライダーナイト』からの変身が、解けていたミハエルは 公園の在る小島から、西へ向かい橋を渡っていた。 金属の基礎構造をコンクリートで固めた如何にも堅牢そうなその橋には、照明の類は一切無い。 その為、障害物が無いにも拘らず深い夜の闇に覆われている。 ミハエルは闇の中を1人、確かな足取りで進んでいた。 クーガーに蹴られた箇所に痛みは有るが、後遺症やこれからの行動に支障が出る類の怪我ではないらしい。 「…………同志。私の力が及ばず、かがみさんとクーガーさんをこの場から助け出す事が出来ませんでした。けれども……」 ミハエルは『同志』に話し掛ける。 周囲には誰も居ない。 しかしミハエルにとっては、確かに存在する。 ミハエルの中に。 あの誰よりも強く正しく賢く、尊敬して止まないミハエルの『同志』が。 ◇ ◇ ◇ 時を、1時間程遡る。 この殺し合いの場に、着いて直ぐの時間。 気付けば、まるで見た事の無い景色が広がっていた。 設置してある遊具や砂場から公園であると理解は出来たが、見覚えは全く無い。 さっきまで別の場所に居て、そこで少女が殺された記憶も生々しい。 (……何だこれは? 一体、何が起こったんだ!?) ミハエルは、ただただ困惑していた。 状況を把握する為、更に記憶を遡る。 自分はオリジナル7のヨロイ、サウダーデ・オブ・サンデーに乗っていて プリズン・プラネット・デストロイヤーにアクセスする為、月に打ち上げられる筈だった。 しかし気付いた時には、V.V.が殺し合いの開始を告げた場所に居た。 (何なんだ一体!? 私は、殺し合い等している場合じゃ無いと言うのに!!) 不可解な現象だが、今のミハエルにとってはそれ所ではない。 何しろ自分がこれから行う任務は同志の夢を叶える為の、最も重要な部分と言って過言ではない。 それを放り出して、こんな訳の分からない場所に来ている事になる。 サウダーデを起動出来るのは自分だけ。 つまり他の人間に任務を任せればいい、と言う訳にはいかない。 一刻も早く、ここからサウダーデに戻らなければ!! 気ばかりが焦るのを抑え、帰還方法を思案する。 とにかくここが何処か? どういった方法でここに来たか? 等の情報を集めなければ。 手持ちの支給されたデイパックを探る。 地図を見付け、慌ててそれを広げた。 そして殺し合いの会場全体を、俯瞰する情報を手に入れた。 (島か……くそっ、これでは現在位置の見当も付けられない!) 途方に暮れる。 そして自分が現在位置を把握しても、直ぐに帰れない事情が有るのを思い出した。 首下を触れば、ひんやりとした金属の感触。 V.V.が説明していた首輪が、自分にも確かに付いていた。 これが有る限り、殺し合いから逃げる事は出来ない。 ミハエルの顔が一気に青くなり、奥歯がカタカタとなる。 自分の死は怖くない。 同志の夢の為、命を投げ出す覚悟は出来ていたのだから。 しかしその彼の夢が果たせなくなるのが怖い。 彼の夢の為に、自分の命を使えなくなるのが怖い。 彼の力になれなくて、見捨てられるのが怖い。 自分の死などまるで比べ物にならない恐怖。 このままでは、それが現実の物となる。 (…………どうすればいい? こんな非道な殺し合いに勝ち残るしか、道はないのか!?) 答えの出ないまま、とりあえず自分に支給された武器の確認に移る。 長方形の金属片を確認する。 添えてある説明書きによると、『仮面ライダーナイト』なる者に変身出来るカードデッキだそうだ。 変身すれば、身体能力や知覚能力が大幅に上がるのみならず アドベントカードを使う事により、様々な超常能力も操れるらしい。 半信半疑でデイパックに有った水の入ったペットボトルに、デッキをかざす。 突如、それまで存在しなかったベルトが腰に巻かれた。 (本当に変身出来るのか! こ、こんな物が存在するなんて!) 説明書きが本当だとしたら、これは恐ろしく強力な武器だろう。 例え50人、60人と言う人間でも殺害する事が可能な武器。 急激に殺し合いに参加している事実が、実感を帯びてくる。 (こ、これなら他の参加者を皆殺しにして勝ち残る事も…………馬鹿な! 私は一体何を考えているんだ!!) ミハエルは元来、正義感の強い人間だ。 意に沿わず殺し合いに巻き込まれた人を、殺せる筈も無い。 ムッターカ達を殺した事はあったが、それとこれとは全く別問題である。 では、どうすればいいのか? 先送りしてきた問題が返って来る。 同志の下に帰りたい。人は殺したくない。 ジレンマに追い詰められ、そこから先に進めない。 (……これでは、エヴァーグリーンに居た頃と何も変わらないじゃないか。自分が何を為すべきかも知らず、何も決められない子供の頃と…………。 私は同志に出会い、生きる意味を見付け変わったんじゃ無かったのか!? ……同志…………私は、一体どうすればいいのですか?) 微動だに出来ず、沈んだ面持ちで開け放してあるデイパックの中に視線を落とす。 そこに見付けた。 (…………な、何でこれがこんな所に!!?) 金属製の指先が異様に尖った義手。 手にとって見る。紛れも無く同志のカギ爪。 (同志の…………こんな所で見るなんて!) それは大して有用な武器とも言えない、只のカギ爪。 しかしそれを見た瞬間、ミハエルはそれまでの悩みが嘘の様にキレイに吹き飛んだ。 自分と同志との、宿命的とも言える深い絆を感じずには居られない。 カギ爪と握手をする様に握るだけで、同志の存在を実感し心が休まった。 (同志、教えて下さい。私はどうすれば良いんですか?) (ミハエルくん、人は……命自体には余り意味が無いのですよ) その場に居ない同志の声が確かに聞こえる。 ミハエルがそれに驚く様子は無い。 (意味が有るのは、その命が生み出す物。つまり、夢だ) 同志が、自分の進む道を教えてくれる。 もう何も迷う事は無い。 (君がその人を忘れなければ、その人は何があろうと死ぬ事は無いんです。君の胸でずっと生き続ける) (同志…………貴方も私の中にずっと居たんですね。それを忘れるなんて、私は馬鹿だ) 何時の間にか、涙を流していた。 これ程素直に喜びの涙を流したのは、初めてだった。 同志が胸の中で生きている。 同志と同じ夢を見ている。 ミハエルは今この時になってようやく、同志を完全に理解出来たと確信する。 (同志、私はこの殺し合いに巻き込まれた人達を救いに行きます。私達と同じ夢を見る事によって) (素晴らしい。君は実に素晴らしい。それが夢です、夢に殉ずる幸せです。何と崇高で、何と力強い……) 頭の中がクリアーになっていくのが分かる。 自分に課せられている問題の解決法が、楽に浮かんで来た。 自分は今まで何に迷っていたのか? そんな必要は何処にも無かったのだ。 同志と同じ夢さえ見れば、全ての人が幸せになれるのだから。 ◇ ◇ ◇ 「……けれども、きっとかがみさんとクーガーさんも共にして同志の下に帰ります 少しばかり時間が掛かるかもしれませんが、必ず果たします。だから待っていて下さい、同志」 ミハエルは考える。 1人でも多くの人を、自分が手に掛けよう。 そうすれば、それだけの人が自分の胸の中で生き続けるのだから。 先程は、下手にかがみに気を使い過ぎて失敗してしまった。 この場にはクーガーの様な、能力を持つ者が他にも居るかも知れない。 次からは遠慮無く、確実に殺していく方法を取るべきだ。 例え顔も名前も知らずとも、きっと同じ夢を見る事は出来る。 だから確実に仕留める事を考えるべきだ。 自分が生きて帰還する事が、より多くの人の幸せに繋がるのだ。 あれ以来、同志の声は聞こえない。 しかしもう、充分だ。 充分同志が共に居ると、実感出来る。 それだけで、何も恐れずに戦う事が出来る。 今も殺し合いで苦しんでいる人が、居るかも知れない。 でも少しだけ待って居て欲しい。必ず救いに行って上げるから。 皆で私の胸の中で生きよう。 そして幸せの時に、また逢いましょう。 【一日目深夜/F-4 橋の上】 【ミハエル・ギャレット@ガンソード】 [装備]:なし [所持品]:支給品一式、カギ爪@ガンソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(0〜1)未確認 [状態]:疲労(中) [思考・行動] 1.同志の下に帰る。 2.1人でも多くの人を『救う』 時系列順で読む Back また逢いましょう(前編) Next 未知との遭遇 投下順で読む Back また逢いましょう(前編) Next 未知との遭遇 040 また逢いましょう(前編) ストレイト・クーガー 044 幸せの星(前編) 柊かがみ ミハエル・ギャレット 057 信じることが正義(ジャスティス)
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また逢いましょう(後編) ◆KKid85tGwY ミハエルが男に蹴り飛ばされた。 そう認識出来たのは、ミハエルが空中を舞い落ちたのを確認してからだった。 赤い髪を後ろにたなびかせた奇妙な白い外套の男は、金属の様な物で覆われた蹴り足を降ろしながら呟く。 「ああ……2分20秒……また2秒、世界を縮めた……」 そして余りの急展開に、呆気に取られるかがみに向き直る。 「お嬢さん、無事ですか? 大丈夫ですか? 何処かお怪我は有りませんか!?」 男は尻餅を付くかがみに、手を差し伸べる。 かがみはすぐにそれを受け取れない。 「おぉぉぉーっと、申し遅れました。俺は決して怪しい者ではありません。世界最速のアルター使い、ストレイト・クーガーと申します!! 俺以外の参加者を捜して市街に向かっていた所を通りすがりに偶然貴女をお見掛けして、その可憐な姿に見惚れてこうしてお声がけした訳です。 こうして出会ったのも何かの縁。何かの運命。俺は常々こう思うんですよ。人との縁、人との出会いを大事にしたいと。古人も言っています。 一期一会、袖振り合うも多少の縁。そう考えると俺の世界を縮めるアルター能力『ラディカル・グッドスピード』は実に出会いのチャンスを与えてくれます。 この能力で世界を誰よりも速く東西奔走すれば、必然様々な出会いにも恵まれると言うもの! そして今日もこんな素敵な女性と巡り合えた! どうですかぁ、貴女もこの出会いを祝して、俺と一緒に市街までナイスなドライブと行きませんか!?」 おぉぉぉーっと、から行きませんか!? までその間実に30秒!!! これが21歳の青年ストレイト・クーガー、ベストコンディションの姿である。 しばし固まっていたかがみも、クーガーが自分を助けてくれた事実を思い出し 恐々ながら差し出す手を取り立ち上がった。 「……た、助けてくれてありがとう」 「なあに、危機に有る女性を助けるのは、連経済特別区域通称ロストグラウンド治安維持武装警察組織『Hold』内の 対アルター能力者用特殊部隊『Holy』に所属する者、いやいや違う。それは違うぞ! それ以前に1人の男として当然の事です!」 「当然では無い。それ以前に貴方は彼女を助ける所か、助かる邪魔をしてしまったんだ」 優に10mは蹴り飛ばされたミハエルだったが、特にダメージのある様子は見られない。 「…………クーガーさん、ですか? 貴方は……どうやら、私の夢をお話しするだけ無駄の様だ」 「愚問だなァ。俺の進む道は俺が決める! 他人に運命を左右されるとは意志を譲ったという事だ、 意志無きものは文化無し。文化無くして俺は無し。俺無くして俺じゃ無いのは当たり前!!」 「有無を言わさず人を蹴るなんて……貴方には常識とか良識とか、そう言うものが無いのか!?」 「お前が言うな!!」 「全くだ。こっちはデート中だってのに邪魔しやがって」 「誰がデート中だ!?」 「そこで、ツッコまないで…!」 「そこを指摘しないでどうするんだ。彼女は貴方とデート中では無く、私と同じ夢を見ていたんだ」 「違うわ!!」 「ハッハッハッハッハ!! 未練がましいなァ、しつこい男は嫌われるぜ?」 ミハエルは呆れたと言わんばかりに首を横に振って、腰に有った剣を取り出し ベルトのバックルから抜いたカードを装填した。 ――SWORD VENT―― 天からミハエルに大剣、と言うより突撃槍(ランス)と言うべき巨大な武器が降りて来た。 「大丈夫。クーガーさん、貴方を相手にするとなると多少は手荒い真似も必要みたいだけど。 貴方もこれからは、私の胸の中でちゃんと生き続けるのだから……」 「言っただろう、俺の進む道は俺が決める。男の胸の中で生きるなんざ、絶対にノウ!!」 ミハエルの踏み込みは一瞬でクーガーとの間合いを無にし、即座にランスを振り下ろす。 ランスは地面を文字通りに切り裂く程の威力を示した事から、重量も相応の物だと見受けられる。 それだけの質量を振るいながら、ミハエルの動きは人の物とは思えない程に速い。 しかしそれ以上に驚くのは、攻撃を受けた筈のクーガーが消えた事である。 「遅いなァ」 クーガーの声が、ミハエルの真横から聞こえる。 ランスを横に払うも、もうそこにはクーガーの姿は無い。 「遅いと言っている! スロウリィだと言っている ! !」 今度は斜め前からの声。 斬り付けるも、やはり手応えは無い。 (…………何これ? 目で追う事も出来ないんだけど…………) ミハエルは神速とも言うべき動きで、クーガーに襲い掛かる。 それをより以上の速度で、クーガーが回避し続けていた。 かがみはこの時になって初めて、この場が単なる殺し合いの舞台と言うだけでなく 自身の想像を絶する存在が跋扈する世界だと認識し得た。 ――TRICK VENT―― 突如、ミハエルの姿が2つに別れた。 2人のミハエルに挟まれ、流石のクーガーも意表を衝かれた様子で動きが止まる。 「残像? 俺より速く動いて見せた!? 馬鹿な! 有り得ない!! インポッシブル!! 俺より速く動ける者等この世に存在しない!!!」 その背後から3人目のミハエルがランスによる突き。 クーガーは身を捻って、それを避わす。 そこからランスが横薙ぎに振るわれ、クーガーの身体は吹き飛ばされた。 5mは地面と平行に飛んだ後、地面を転がる。 ミハエルの、決して太いとは言えない腕からは考えられない膂力。 更に、計6人にも姿を増やしたミハエルがクーガーを囲む。 「こうなっては、クーガーさん……貴方に勝ち目は無い。もう、無駄な抵抗は止めにして欲しい」 「大した自信だ。速さに頼らず分身するとは驚いたが、たった6人程度じゃあ俺を止めるのには、足りない!」 敵に囲まれながら、起き上がるクーガーは不敵に笑みを浮かべている。 そして陸上競技の予備動作の如く、身を低く構えた。 「全然足りない! 足ァりないぞォ! お前に足りない物は、それは―――――――――」 刹那、砂塵を上げクーガーの姿が消えた。 「情熱―――――――――――――――――――――――――――――――――――――」 ただ速く、ミハエルの1人が蹴られ掻き消える。 「――思想―――――――――――――――――――――――――――――――――――」 何よりも速く、2人目のミハエルが蹴られ掻き消える。 「――――理念頭脳―――――――――――――――――――――――――――――――」 更に速さを増し、3人目のミハエルを消し去る。 「――――――――気品優雅さ勤勉さ!!―――――――――――――――――――――」 更なる加速、4人目と5人目のミハエルも消し去る。 「――――――――――――――――――そしてェ何よりもォォォ、速さが足りない!!」 止まる事を知らない加速の果て、6人目のミハエルが蹴り倒された。 「纏めて蹴り倒してやろうと思ったら、他は全部幻影だったとはなァ。速さの無い力は所詮虚仮。 速さはあらゆる能力に優れて勝る、唯一無二絶対無敵最強最大の戦力なのだァ!!」 ミハエルはランスを杖に、何とか立ち上がる。 「くっ、動きさえ止められれば…………これは!?」 全身を被う装甲が、粒子となって宙に溶けて行く。 「時間切れ……………………これ以上の戦闘続行は不可能か。…………仕方ない。 憶えて置いて欲しい。私は決して夢を諦めはしない。……だから…………何れ、また逢いましょう」 ――NASTY VENT―― 蝙蝠の怪物が羽ばたきを始め、突風の如き衝撃波が発せられる。 激流と化した衝撃波は、一直線にかがみへ向かって行く。 それを受けたかがみは、堪らず吹き飛ばされる。 ――――筈だった。 気付いた時には、クーガーの両腕に抱えられていた。 かがみの居た地点はすでに遥か遠方で、衝撃波に拠り砂塵を舞っている。 自分が気付かぬうちに抱きかかえられていた事に――今日でもう何度目にもなるが――驚嘆し、かがみはクーガーの顔を見上げる。 当のクーガーは険しい顔でミハエルの居た、公園の方を見つめていた。 ミハエルの姿が見えない。 それでかがみにも衝撃波による攻撃が、クーガーを自分に引き付け その隙にミハエルが逃げる為の物だと理解出来た。 「…………逃げられたんだ……」 「なぁに、俺の速さを持ってすれば何時でも何年何ヶ月何日何時間何分何秒のタイムロスを開けられようとすぐさまに追い付いてみせます」 「そう……そ、それよりも私はもう降りても、だ、大丈夫だから!!」 かがみは自分がクーガーの腕の中に、俗にお姫様抱っこと言われる状態で居た事を思い出し 恥ずかしさにしどろもどろになりながら、慌ててクーガーの腕から降りる。 「ハッハッハッハッハッハ!! 俺はさっきのままでも、構わないんですがねぇ。 先程も言いましたが、俺は市街へ向かおうと考えていたんですよ。何故市街を目的地とするのか!? その理由は単純至極簡単明快。 市街こそ近代施設娯楽空間学術資料等の集まる、言わば文化の集積地! ロストグラウンドでも荒野より市街が文化的!! 文化的ならそこに人が集まるのは当たり前! そう判断した為ですよ!! ……これもさっき言ったか? まあいいや。さっき言ったついでにもう1度お誘いしましょう。貴女も市街までご一緒しませんかァ!? 勿論世界最速たる俺の速さに付いて来るなんて真似は、貴女には到底適わないでしょう。 しかぁし心配御無用万事私にお任せ下さい。オォォルザァッツオォォォォォケイ!! 私が貴女を抱えて走ればノープロブレム。後は私が、地球上の如何なる移動手段よりも安全快適何より最速で市街までエスコートします!! どうですかぁ? きっと素敵なドライブになると思いますよぉ?」 かがみが引き気味になっているのを気にも留めず、クーガーは捲し立てる。 かがみとしては、クーガーは命の恩人。決して信用出来ない人ではないだろう。 先程は信用出来ると判断したミハエルに裏切られたのが、未だに胸中のしこりとして残ってはいるが クーガーの限っては、今度こそ滅多無いと思えた。 しかしどうしてもかがみは、クーガーの誘いに二の足を踏んでしまう。 クーガーは間違い無く、悪い人間ではない。 しかしかがみがクーガーを1言で言い表すなら、それは変態と呼ぶだろう。 (…………私って、変わり者によっぽど縁があるのか?) かがみは今は遠いアホ毛の友人を思い浮かべながら、手を差し伸べるクーガーに冷たい目を送り続けていた 【一日目深夜/F-5 岸辺】 【柊かがみ@らき☆すた】 [装備]:エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に、北条悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に [所持品]:支給品一式 [状態]:健康、全身が軽く濡れている [思考・行動] 1.つかさ達を捜す。 2.クーガーの誘いに乗る? 【一日目深夜/F-5 岸辺】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [装備]:なし [所持品]:支給品一式、ランダム支給品(1〜3)未確認 [状態]:健康、ラディカル・グッドスピード(脚部限定)発動中 [思考・行動] 1.かがみと共に市街へ行く。 既に『仮面ライダーナイト』からの変身が、解けていたミハエルは 公園の在る小島から、西へ向かい橋を渡っていた。 金属の基礎構造をコンクリートで固めた如何にも堅牢そうなその橋には、照明の類は一切無い。 その為、障害物が無いにも拘らず深い夜の闇に覆われている。 ミハエルは闇の中を1人、確かな足取りで進んでいた。 クーガーに蹴られた箇所に痛みは有るが、後遺症やこれからの行動に支障が出る類の怪我ではないらしい。 「…………同志。私の力が及ばず、かがみさんとクーガーさんをこの場から助け出す事が出来ませんでした。けれども……」 ミハエルは『同志』に話し掛ける。 周囲には誰も居ない。 しかしミハエルにとっては、確かに存在する。 ミハエルの中に。 あの誰よりも強く正しく賢く、尊敬して止まないミハエルの『同志』が。 ◇ ◇ ◇ 時を、1時間程遡る。 この殺し合いの場に、着いて直ぐの時間。 気付けば、まるで見た事の無い景色が広がっていた。 設置してある遊具や砂場から公園であると理解は出来たが、見覚えは全く無い。 さっきまで別の場所に居て、そこで少女が殺された記憶も生々しい。 (……何だこれは? 一体、何が起こったんだ!?) ミハエルは、ただただ困惑していた。 状況を把握する為、更に記憶を遡る。 自分はオリジナル7のヨロイ、サウダーデ・オブ・サンデーに乗っていて プリズン・プラネット・デストロイヤーにアクセスする為、月に打ち上げられる筈だった。 しかし気付いた時には、V.V.が殺し合いの開始を告げた場所に居た。 (何なんだ一体!? 私は、殺し合い等している場合じゃ無いと言うのに!!) 不可解な現象だが、今のミハエルにとってはそれ所ではない。 何しろ自分がこれから行う任務は同志の夢を叶える為の、最も重要な部分と言って過言ではない。 それを放り出して、こんな訳の分からない場所に来ている事になる。 サウダーデを起動出来るのは自分だけ。 つまり他の人間に任務を任せればいい、と言う訳にはいかない。 一刻も早く、ここからサウダーデに戻らなければ!! 気ばかりが焦るのを抑え、帰還方法を思案する。 とにかくここが何処か? どういった方法でここに来たか? 等の情報を集めなければ。 手持ちの支給されたデイパックを探る。 地図を見付け、慌ててそれを広げた。 そして殺し合いの会場全体を、俯瞰する情報を手に入れた。 (島か……くそっ、これでは現在位置の見当も付けられない!) 途方に暮れる。 そして自分が現在位置を把握しても、直ぐに帰れない事情が有るのを思い出した。 首下を触れば、ひんやりとした金属の感触。 V.V.が説明していた首輪が、自分にも確かに付いていた。 これが有る限り、殺し合いから逃げる事は出来ない。 ミハエルの顔が一気に青くなり、奥歯がカタカタとなる。 自分の死は怖くない。 同志の夢の為、命を投げ出す覚悟は出来ていたのだから。 しかしその彼の夢が果たせなくなるのが怖い。 彼の夢の為に、自分の命を使えなくなるのが怖い。 彼の力になれなくて、見捨てられるのが怖い。 自分の死などまるで比べ物にならない恐怖。 このままでは、それが現実の物となる。 (…………どうすればいい? こんな非道な殺し合いに勝ち残るしか、道はないのか!?) 答えの出ないまま、とりあえず自分に支給された武器の確認に移る。 長方形の金属片を確認する。 添えてある説明書きによると、『仮面ライダーナイト』なる者に変身出来るカードデッキだそうだ。 変身すれば、身体能力や知覚能力が大幅に上がるのみならず アドベントカードを使う事により、様々な超常能力も操れるらしい。 半信半疑でデイパックに有った水の入ったペットボトルに、デッキをかざす。 突如、それまで存在しなかったベルトが腰に巻かれた。 (本当に変身出来るのか! こ、こんな物が存在するなんて!) 説明書きが本当だとしたら、これは恐ろしく強力な武器だろう。 例え50人、60人と言う人間でも殺害する事が可能な武器。 急激に殺し合いに参加している事実が、実感を帯びてくる。 (こ、これなら他の参加者を皆殺しにして勝ち残る事も…………馬鹿な! 私は一体何を考えているんだ!!) ミハエルは元来、正義感の強い人間だ。 意に沿わず殺し合いに巻き込まれた人を、殺せる筈も無い。 ムッターカ達を殺した事はあったが、それとこれとは全く別問題である。 では、どうすればいいのか? 先送りしてきた問題が返って来る。 同志の下に帰りたい。人は殺したくない。 ジレンマに追い詰められ、そこから先に進めない。 (……これでは、エヴァーグリーンに居た頃と何も変わらないじゃないか。自分が何を為すべきかも知らず、何も決められない子供の頃と…………。 私は同志に出会い、生きる意味を見付け変わったんじゃ無かったのか!? ……同志…………私は、一体どうすればいいのですか?) 微動だに出来ず、沈んだ面持ちで開け放してあるデイパックの中に視線を落とす。 そこに見付けた。 (…………な、何でこれがこんな所に!!?) 金属製の指先が異様に尖った義手。 手にとって見る。紛れも無く同志のカギ爪。 (同志の…………こんな所で見るなんて!) それは大して有用な武器とも言えない、只のカギ爪。 しかしそれを見た瞬間、ミハエルはそれまでの悩みが嘘の様にキレイに吹き飛んだ。 自分と同志との、宿命的とも言える深い絆を感じずには居られない。 カギ爪と握手をする様に握るだけで、同志の存在を実感し心が休まった。 (同志、教えて下さい。私はどうすれば良いんですか?) (ミハエルくん、人は……命自体には余り意味が無いのですよ) その場に居ない同志の声が確かに聞こえる。 ミハエルがそれに驚く様子は無い。 (意味が有るのは、その命が生み出す物。つまり、夢だ) 同志が、自分の進む道を教えてくれる。 もう何も迷う事は無い。 (君がその人を忘れなければ、その人は何があろうと死ぬ事は無いんです。君の胸でずっと生き続ける) (同志…………貴方も私の中にずっと居たんですね。それを忘れるなんて、私は馬鹿だ) 何時の間にか、涙を流していた。 これ程素直に喜びの涙を流したのは、初めてだった。 同志が胸の中で生きている。 同志と同じ夢を見ている。 ミハエルは今この時になってようやく、同志を完全に理解出来たと確信する。 (同志、私はこの殺し合いに巻き込まれた人達を救いに行きます。私達と同じ夢を見る事によって) (素晴らしい。君は実に素晴らしい。それが夢です、夢に殉ずる幸せです。何と崇高で、何と力強い……) 頭の中がクリアーになっていくのが分かる。 自分に課せられている問題の解決法が、楽に浮かんで来た。 自分は今まで何に迷っていたのか? そんな必要は何処にも無かったのだ。 同志と同じ夢さえ見れば、全ての人が幸せになれるのだから。 ◇ ◇ ◇ 「……けれども、きっとかがみさんとクーガーさんも共にして同志の下に帰ります 少しばかり時間が掛かるかもしれませんが、必ず果たします。だから待っていて下さい、同志」 ミハエルは考える。 1人でも多くの人を、自分が手に掛けよう。 そうすれば、それだけの人が自分の胸の中で生き続けるのだから。 先程は、下手にかがみに気を使い過ぎて失敗してしまった。 この場にはクーガーの様な、能力を持つ者が他にも居るかも知れない。 次からは遠慮無く、確実に殺していく方法を取るべきだ。 例え顔も名前も知らずとも、きっと同じ夢を見る事は出来る。 だから確実に仕留める事を考えるべきだ。 自分が生きて帰還する事が、より多くの人の幸せに繋がるのだ。 あれ以来、同志の声は聞こえない。 しかしもう、充分だ。 充分同志が共に居ると、実感出来る。 それだけで、何も恐れずに戦う事が出来る。 今も殺し合いで苦しんでいる人が、居るかも知れない。 でも少しだけ待って居て欲しい。必ず救いに行って上げるから。 皆で私の胸の中で生きよう。 そして幸せの時に、また逢いましょう。 【一日目深夜/F-4 橋の上】 【ミハエル・ギャレット@ガンソード】 [装備]:なし [所持品]:支給品一式、カギ爪@ガンソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(0〜1)未確認 [状態]:疲労(中) [思考・行動] 1.同志の下に帰る。 2.1人でも多くの人を『救う』 時系列順で読む Back また逢いましょう(前編) Next 未知との遭遇 投下順で読む Back また逢いましょう(前編) Next 未知との遭遇 040 また逢いましょう(前編) ストレイト・クーガー 044 幸せの星 柊かがみ ミハエル・ギャレット 057 信じることが正義(ジャスティス)
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ここは亜空の使者の攻略ページですっ! 亜空の使者のようにちょっとずつ更新していって100%を目指します。 ストーリーチャートはもちろんの事、フィギア等やボス攻略までする、このHPの中では一番発達したページになりそうな予感です。 ネタバレ情報もあるのでまだクリアしていない方は読むのを避けたほうが良いかもしれません。 亜空軍の事までしっかり書いてあるので攻略本より役に立つかも知れません。 なお、情報提供はスマブラ県在住亜空軍のWさんからです。え~と、一言書いてありましたので掲示します。 「ワッハハハハ。ワリオ様だ!とりあえず「読め!」そして「遊べ!」クッパなんかにゃ負けはしない!」 だそうです。スマブラ県在住亜空軍のWさんに感謝して攻略ページを読んでいきましょう。 ☆簡単移動見出しリンク☆ ストーリーチャート プロローグ攻略! 前編攻略 中編攻略 後編攻略 エンディング攻略! ボス攻略 クリア後は・・・? ○ノ 安全第一で作業中・・・
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動物園で逢いましょう (2009年3月 双葉社 / 2012年5月 双葉文庫) ※残念ながら現在は絶版となってます kindle発売中 鍵のない檻 鉱物シリーズ 『動物園で逢いましょう』に収録されている1作+貴重な掌編付 登場人物 相河(アイカワ) 自衛隊補給課長、防衛大学校トップ卒業のエリート 不倫問題で高松が閑職に飛ばされるところを引き取った アイリーン・菅原(アイリーン・スガワラ) ウェザスプーンと同じ空手道場に通う生徒 クラブ「ミリオン」のダンサー アオキ 横須賀から来た<会社>の下請け タニと一緒に「明日のアジアの会」を車で見張っていた アニマル・スター スパイではないけれど、多くの人間を情報機関に紹介してきた大物 その中の一人が大物スパイとなって日本政府の情報を北に流してるため、横田の獲物の一人となっている =桂星 アレン・ウェザスプーン 180センチを超える大柄な黒人。海兵隊の伍長。オペレーター 路上で何者かに襲われ入院中 アンジェラ 六本木にあるレストランでエディが一緒にいた女性 日本に留学中、アルバイトでモデルもしている 河西孝治(カサイコウジ) 香港の領事館に勤務していた外務省職員" 金田光子(カネダミツコ) ドンが3回も盗みに入った家の人物。当時はソウルの高級クラブで働き、金万正の愛人だった 4年前に日本に戻って入間でスナックを経営。現在の愛人は土田州 金万正(キムマンジョン) 韓国国家情報部副部長。金田光子の元愛人。情報漏洩で失脚 木村(キムラ) 北上野の路地裏にある「カンナ」のマスター 西側情報組織の協力者 桂星(ケースン) 9年前、仁志にドンとロウを紹介した人物。詩人 =アニマル・スター 柴崎(シバザキ) 仁志の昔の知り合い。 香港で語学学校の教師をしていたが中国政府を非難するような文章を投稿し、当局に目を付けられ香港を出て韓国へ。 ジュアン・ホウ トニー(ソン)の自称元フィアンセ 川崎のコリア・クラブ『華華(フアフア)』で歌手兼ホステス ジョシュ・メイヤー カメラマン。米軍の兵隊で元韓国在住。沖縄勤務後グアムで退役 軍を去る直前に情報漏洩で内部調査の対象 高口明美(タカグチアケミ) 隆がアニマルスターの件で出かけていった「明日のアジアの会」のボランティア 公務員になりたいために来ている 「明日のアジアの会」メンバーは他に藤井、赤松、佐野 高橋正友美(タカハシマユミ) ウェザスプーンと同じ空手道場の生徒。「横須賀から基地をなくす会」の会員 米軍人がおこした事故で祖母を亡くしている 高松昌平(タカマツショウヘイ) 六本木の外国人クラブ「バニービュー」で成長したウサギといた男 三等海佐。前の職場で女性隊員との不倫交際が問題になり転勤 田口(タグチ) 自衛隊の事務官、隆が防衛省内部に抱える情報提供者の一人 戦艦マニア タニ 横須賀から来た<会社>の下請け アオキと一緒に「明日のアジアの会」を車で見張っていた。盗みが得意 土田州(ツチダシュウ) 本名 土田正雄 金田光子の愛人。左翼活動家崩れ。 NPO法人「明日のアジアの会」の団体職員 トニー・ヨンボ 本名 ソン・ヨンボ。ジュアンの元ヒモ 日韓合同移動訓練で到着した日の夜から戻ってこないため坂下が探していた 仁志洋介(ニシヨウスケ) 隆が上野動物園で待ち合わせた初老の男性 55歳まで大手新聞社の国際政治部記者として活躍、その後5年ほど地方新聞社で働く。 現役の記者時代、親北朝鮮派として知られ、アメリカと日本の情報部や公安機関からは要注意人物とみなされていた 仁志里緒(ニシリオ) 仁志が動物園に連れてきた孫。5歳の少女。 フランセ女子学院付属小学校へ行く予定 二宮麻衣子(ニノミヤマイコ) ウェザスプーンと同じ空手道場に通う生徒 クラブ「ミリオン」のダンサーだったが、フロア勤務になっている 長谷川(ハセガワ) ウェザスプーンが通っている空手道場の師範 ミスター・ドン 動物園で隆が仁志に見せた人物。9年前に香港で仁志にスクープを提供(弾道ミサイルの写真) 日本ではヤマダと名乗っていた ミスター・ロウ ミスター・ドンの共同経営者。9年前に仁志が会った人物 山岡拓朗(ヤマオカタクロウ) 文庫掌編「街角の向日葵」 悪い女にひっかかり会社を退職した5年前から仕事をしていない 霞が関に近いオフィス街で洪に声をかけられた。洪に「向日葵」さんと呼ばれる 夢風きらり(ユメカゼキラリ) 桂星について隆が訊きに行った人物。桂と一緒に捜索活動をしている詩人 若宮勘一郎(ワカミヤカンイチロウ) 「新創造社」の社長。光子の店で見た写真(カメラマン ジョシュ・メイヤー)を掲載していた出版社 喫茶店の大学ノートに書かれていた名前 桂星の通っていた高円寺の喫茶店におかれていたノートの人物。狐候補 佐藤貴久、唯川めぐみ、白川洋一郎、河西孝治、白畑源治、草野礼子、田中晋平 空手道場のメンバー 早見顕一、桑名洋介、松本新一郎・真二郎、二宮麻衣子、アイリーン菅原
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オープニングテーマ 『Let s!フレッシュプリキュア!』 作詞 - 六ツ見純代、作曲 - 高取ヒデアキ、編曲 - 亀山耕一郎、歌 - 茂家瑞季 使用話数:第1話 - 第25話 『Let s!フレッシュプリキュア! 〜Hybrid ver.〜』 作詞 - 六ツ見純代、作曲 - 高取ヒデアキ、編曲 - 亀山耕一郎、村田昭、歌 - 茂家瑞季 使用話数:第26話 - エンディングテーマ 『You make me happy!』 作詞 - 六ツ見純代、作曲 - marhy、編曲 - 亀山耕一郎、歌 - 林桃子 使用話数:第1話 - 第25話 『H@ppy Together!!!』 作詞 - 六ツ見純代、作曲 - marhy、編曲 - 村田昭、marhy、歌 - 林桃子 使用話数:第26話 - 『Let s!フレッシュプリキュア! / You make me happy!』 2009年2月4日発売。本作のオープニングテーマとエンディングテーマを収録した両A面シングル(12cm)。初回版にはオリジナルステッカーの特典がある。マーベラスエンターテイメントより定価1,260円(税込)。MJCD-23059 『フレッシュプリキュア!ボーカルアルバム1 〜太陽の子供たちへ〜』 2009年7月23日発売。初回封入特典としてオリジナルステッカー。MJCD-20168 キャラソンに加え前期OP・EDもFullで収録。 収録内容 01 Let s!フレッシュプリキュア! 茂家瑞季 02 ハッピーカムカム 沖佳苗(as キュアピーチ) 03 星よりも、花よりも 喜多村英梨(as キュアベリー) 04 heart dictionary 中川亜紀子(as キュアパイン) 05 笑顔の花。ココロの宙。 小松由佳(as キュアパッション) 06 フレッシュプリキュア・サンチャイルド キュアフレッシュ!(プリキュア4人) 07 プリキュアMelody☆ 茂家瑞季 08 Special Thanks 林桃子 09 (^^)ハナマルスマイル(^^) M*cube(茂家瑞季・工藤真由・林桃子) 10 Changing my Wind 工藤真由 11 You make me happy! 林桃子 百合フィルターをかけて聞くと、4曲目はブキ→せつ、5曲目はせつ→ラブと感じられる。 『Let s!フレッシュプリキュア! ~Hybrid ver.~ / H@ppy Together!!!』 2009年8月5日発売。本作後期のオープニングテーマとエンディングテーマを収録したシングル。マーベラスエンターテイメントより定価は各1,260円(税込)。MJCD-23066
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一年に一度会いましょう。 あけおめ! -- (クラマリ) 2020-01-01 02 09 26 https //w.atwiki.jp/canco/ 何故か昔の完コー見れるで、っていうお知らせ。 -- (クラマリ) 2020-04-12 23 27 39 すげえめっちゃ懐かしいwwww -- (オメガ) 2020-04-23 00 34 49 なんかめっちゃ黒歴史で草 -- (オメガ) 2020-04-23 00 35 33 (kankoじゃなくてcancoなんやな...) -- (クラマリ) 2020-05-01 21 14 51 60日以上うんぬんかんぬんが出てるので消してあげようホトトギス -- (くらまり) 2020-07-02 18 40 22 う -- (名無しさん) 2020-09-15 23 45 11 あけおめことよろ -- (くらまり) 2021-01-01 00 05 07 いろいろ思い出しました -- (K) 2021-01-01 00 54 55 aimix-BBSサービス終了のお知らせ...かなしみ... -- (くらまり) 2021-04-07 22 33 42 名前 コメント すべてのコメントを見る 今日来た人 - 人 昨日来た人 - 人
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フレッシュプリキュア! おはなしブック まるごとキュアパッション! http //shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=3793702 x=C 百合好きなら絶対買うべし フレッシュプリキュア! マグネットきせかえ2 http //www.sky-field.net/ai/servlet/WspCtlGetList09 ラブせつ・美希ブキは勿論、互いの洋服も着せ替え可能
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こましょう imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (こましょう.jpg) nao ものすごくサッパリ。この時期立て続けに濃厚とんこつの連続だったので逆に好印象。「中華な醤油ソバ」という部類ではかなり完成度高い。 mii サッパリしていて美味しかったです。飽きずに食べられそう。 拡大地図を表示 定休日 月曜、第1・3火 営業時間 18 00~24 00(土・日・祝 17 00~22 30) 店舗住所 東京都世田谷区祖師谷1-9-14 2007-12-25 00 26 40 (Tue)
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掃除を終えて部室に行くと、珍しいことにキョンしかいなかった。 「あら、あんただけなんて珍しいわね。皆は?」 「朝比奈さんと古泉はまだ来てなくて、長門はコンピ研に行ってる。」 キョンはあたしに背を向け電気ストーブで暖を取りながらそう答えた。 「そう。」 キョンとで二人きりなんて、結構久しぶりね。ちょっと嬉しいかも。 「で、あんたは一人、ストーブで暖を取ってたってわけ?」 「ああ。」 「ふーん。団長のあたしがこの寒い中、外で掃除してたってのにいい身分ね。」 「こればっかりはどうしようもない。恨むんなら掃除当番の割当を決めた岡部を恨んでくれ。」 「ふん。」 キョンはあたしと会話しながらもこっちを見ずに電気ストーブで暖を取っている。 今のあたしには寒さのせいで少し縮こままっているその後姿が何故かちょっと可愛いく見えた。 「お前もストーブにあたるか?」 「あら、あんたにしては気が利くわね。」 「その言い方だと、まるで俺が気が利かないみたいだな。」 「みたいじゃなく、そうなのよ。」 「これでも、何時もそこそこに気を利かせてるつもりなんだがな。ほら。」 そう言いながらキョンは電気ストーブの前のスペースを半分くらい空けてくれた。 それも良いんだけど、これ小さいからそうすると二人ともストーブの当たり方が微妙になるのよね。 もっといい方法ないかしら…、あっ、いいこと思いついた。 「別にどいてくれなくていいわ。元の場所に戻って。」 「はあ?何するつもりだ?」 「こうするつもりよ!」 そう言うなり、あたしはキョンに後ろから覆いかぶさった。 「!!」 奇襲成功ね。キョンのやつかなり驚いてるわ。 「これならあんたは動かなくていいし、あたしはあんたから体温を奪いつつ ストーブに当たれるから、二人で横に並んでストーブに当たるより効率的でしょ?」 「……あのなあ。」 「何よ。その不満そうな返事は。」 「お前さ、今自分が何してるのかわかってるのか?」 何を言うのかと思えば…。こいつはあたしが何も考えずに行動してるとでも思ってんの? そりゃあたまにはそんな時もあるけど、大体は考えて行動してるわよあたしは。 「何って、あんたと一緒にストーブで暖を取ってるんじゃない。」 「はあ。」 そんな盛大な溜息を吐くこと無いでしょ。別にあたし間違ってないじゃない。 「じゃあ、聞き方を変えるが、お前は俺に何をしてる?」 回りくどいわね。さっさと結論を言えばいいのに。 「そうね、後ろから抱き付いてるってのが一番近いんじゃないの。」 「近いって言うかそのものだろ。」 「まあ、そうね。で?結局あんたは何が言いたいのよ。回りくどいのはメンドイから さっさと結論を言いなさいよ。」 あたしがそう言ってやると、キョンは少しの間言葉を選ぶように間をとってから返答した。 「ようするにだな…、恋人でもない異性に抱きつくのは止めたほうがいいと言いたいんだ。」 へっ? 「そりゃあ、人肌は意外と暖かいからストーブ替わりには良いかもしれんが、やるならせめて同姓にしとけ。」 ちょっと予想外な展開。これは、ひょっとして…。 「男ってのはお前が思ってる以上に単純な生き物なんだ。こんなことを 普通の男にしたら変な誤解を受ける可能性が高いと思うぞ。」 キョンがあたしのことを異性と認識してくれてるってことよね。 キョンの奴、以前あたしが部室で「着替える」って言っても全く気にも留めずに、 そのまま居座ろうとしたし、何時もあたしのことを同姓の悪友みたいな感じで扱うから ひょっとしてあたしのこと男だと思ってるんじゃないかと思ったけど、違ったのね。よかった。 「おい、ハルヒ。人の話し聞いてるか。」 「えっ?…ああ、うん。聞いてるわよ。ちゃんと。」 「だったら、そろそろ離れてくれないか。」 別に離れることに異論は無いけど、その前にこれだけは聞いとかなくちゃね。 「その前に一聞きたいんだけど。」 「何だよ。」 「あんたさ。さっき、こういうことしたら変な誤解を受ける可能性が高いって言ったわよね。」 「ああ。」 「あんたもさ、あたしに…その、変な誤解したの?」 あたしの質問にキョンは少し体を震わしたような気がした。 「す、するわけないだろ。言っておくが、さっきの話はお前が他の誰かに迷惑をかけないために しただけで、あの話に他意は全く無い。」 「ふーん。」 ちょっと、そこまではっきりと否定する必要ないでしょ。そりゃあ、キョンが肯定するなんて 思ってなかったけどさ、否定するにしてももうちょっと言い方ってもんがあるでしょ普通。 何かむかつくからちょっとイジワルしてやる。 「あんたは別に平気なんだ。」 「…ああ。」 「だったらさ、別にこのままでもいいわよね。」 「なっ!?」 「だって、あたしはこの方が二人とも暖かいと思ってるし、あんたはあたしに抱きつかれても なんとも思わないんでしょ。なら問題ないじゃない。」 「いや…、そういう問題じゃないだろ。」 あら、思ったより動揺してるわね。さっきの台詞が嘘みたいだわ。 「じゃあ、どういう問題なのよ。」 「それはだな……、その…。」 「それは?」 「………何でもない。忘れてくれ。」 「あっそ。じゃあ、このままでいいのね。」 「………好きにしろ。」 あたし達が暖を取り始めてから結構時間がたったけど皆なかなか来ないわね。何やってるのかしら。 「……ハルヒ。」 「何?」 「…やっぱり、離れてくれんか。」 「あら、さっきは好きにしろって言ってなかったけ。」 「確かに言ったけどさ…、もう十分だろ。ストーブが効いてきて部屋の温度もましになってきたし。」 確かに部屋の温度はましになってきてるわね。でももうちょっとこうしてたいな。 キョンってみくるちゃん程じゃないけど結構暖いし、抱きついてると何か落ち着くのよ。 「うーん、もうちょっと。あんたって結構暖かくてこうしてると何か落ち着くの。」 「…そんなこと言われてもな、さすがにそろそろ他の皆が来そうだ。こんなところを見られたら不味い。」 「確かにそうだけど…。」 「だろ。」 だけどさ、こんなことできる機会なんて滅多にないんだから、 もうちょっとこうしてたっていいじゃない。でも…、しかたがないか。 「……わかったわよ。離れればいいんでしょ、離れれば。」 「ふう。」 あたしは渋々キョンをはなした。 あーあ、もうちょっとキョンにくっついていたかったな。 「ずっと屈んでたからか足が痛いな。」 「あっそ。」 「…………。」 「…………。」 「…喉が渇いたんでお茶淹れようと思うんだがいるか?」 「…いらない。」 「そうか。」 「…………。」 「…………。」 「ハルヒ。」 「何よ。」 「さっきから何か怒ってないか?」 「別に…」 あたしは怒ってるんじゃなくて、寂しいとか物足りないとかそんな気分なのよバカキョン。 「あー…、そうか。」 「…………。」 「…………。」 「なあ…。」 「今度は何。」 「あのだな…、ハルヒ。」 「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ。」 「じゃあ言わせてもらうが、ああいうことをするのは俺ぐらいにしとけ。」 「へっ!?」 い、いきなり何言い出すのよ。さっきはするなって言ってたくせに。 「だから、ああいうことをするのは俺ぐらいにしとけと言ってるんだ、」 「な、何よ。最初と言ってることが違うじゃない。」 正直なところ、そう言ってくれると嬉しいけど…、でも…一体どういう風の吹き回し? 「確かに。だが、こうでも言わんと後でお前が朝比奈さんたちに迷惑をかけそうな気がしたからな。」 ああ、そういうことね。確かに否定はできないわ。 「そうなるくらいなら俺が犠牲になったほうがいいと思ったんだよ。」 「ふーん。その言葉に二言は無いわね。」 「ああ。」 「じゃあ、帰りにあんたの自転車の後ろに乗せなさい。」 「おい、何でそうなる。」 「決まってるじゃない。帰りながら、あんたで暖を取りたいからよ!」 「…そうくるか。」 ふふ、そうくるのよ。 「言っとくけど、さっきのやっぱなしとか言ったら罰ゲームだから!」 「わかったよ。罰ゲームは嫌だからな。」 苦笑で答えるキョンにあたしは笑顔で言ってやる。 「よろしい。」 あたしは放課後を楽しみにしつつ、残り少ないであろう キョンと二人っきりの時間を楽しむことにした。